撮影の扉写真。料理の湯気と手元を近くから撮影するカメラ
説明が続く場面を支えるのは、そのとき手元で起きていること。

Bロールとは、主となる映像を補う映像のことです。主となる映像はAロールと呼ばれます。インタビューなら、話している人を映した映像がAロール、話の内容を補足する手元や道具、作業の様子がBロールです。

Bロールは音のない映像やスローモーションのことだと思われがちですが、必ずしもそうではありません。その場の音を残すことも、普通の速さで使うことも多くあります。決め手は撮り方ではなく、主となる映像を補っているかどうかです。

話している顔だけが続くと、内容が良くても見続けるのが難しくなります。ただし、Bロールは画面をにぎやかにするために入れるものではありません。話していることを目で理解する助けになって、はじめて意味があります。

ここでは、何を撮るか、どう撮るか、重ねてよいかの判断に加えて、記事の後半でAロールとの違い、3つの場面の記入例、編集で重ねる基本の手順を扱います。

撮る前に、話の内容を書き出す

インサート映像は、あとから思いつきで足すと話とずれます。撮る前に、話す内容を短く書き出しておきます。

見るのは次の点です。

  • 話に出てくる物:手に取れるもの、置いてあるもの
  • 話に出てくる場所:入口、机、作業する場所
  • 動作:始まりと終わりがある動き

書き出した中から、実際に撮れるものに印を付けます。撮れないものを、似ているだけの絵で無理に埋めると、見ている人が違和感を持ちます。

話の中から「見せられるもの」を拾う

「道具を一つずつ確認する」という話なら、点検する手元や道具の並びを撮れます。話に出てきた具体物が、そのままBロールの候補です。

「集中しています」のような抽象的な言葉も、実際の動作に置き換えて考えます。何をしているときに集中しているのかを聞けば、撮るものが決まります。

収録後に発言を振り返り、補足できる場面を3つ選びます。話題と関係のない風景ばかりでは、説明の助けになりません。

可能なら、インタビューの直後にそのまま撮ります。日を分けると、服装や光の条件が変わり、同じ場面の記録に見えにくくなることがあります。

動作を、途中から撮らない

手を伸ばすところから、作業を終えて手を離すところまで撮ります。始まりと終わりがあると、編集で使う範囲を選びやすくなります。

録画直後にカメラを動かしたり、動作の直後に止めたりせず、前後に落ち着いた時間を残します。使える部分が数秒しかないと、つなぐ位置を選ぶ余地がほとんど残りません。短く差し込むだけなら数秒で足りる場面もありますが、前後に余裕がある素材のほうが編集で扱いやすくなります。

一律の秒数で決めず、動作が完結しているかで判断します。短い動作なら数秒、長い作業なら通しで撮っておきます。

実際の内容と、食い違わせない

本人が昔の経験を話している上に今の作業を重ねる場合、当時の記録だと誤解させない見せ方を考えます。撮影用の実演なら、必要に応じてその旨を示します。

話を隠すために何でも重ねるのではなく、その映像から見る人が何を受け取るかを確認します。映像は、言葉より強く記憶に残ります。

事実関係が曖昧なら、顔の映像を残す判断もできます。Bロールを入れないことも、選択肢のひとつです。

人や書類が写り込む場合は、公開してよいかを確認します。本人の作業風景でも、背景の情報まで許可を得ているとは限りません。

重ねるか、顔を残すか

全部に重ねる必要はありません。次の基準で選びます。

  • 重ねる:話に出た具体物がある/作業の様子が説明になる
  • 顔を残す:表情が内容の一部/事実関係に注意が要る場面
  • 短く重ねる:場所や道具を示すだけでよいとき

重ねている間も、声は続いています。映像に気を取られて声を聞き逃さないか、実際に再生して確認します。

迷ったら、重ねない方向で判断します。足りなければ後から足せますが、入れすぎた映像は気づきにくくなります。

フィールドノート本編とB-rollの重ね方

説明が長い場面は、同じ画のままだと見続けるのが難しくなります。

図の内容2本の帯の図です。下の帯は途切れずに続く説明の声で、上の帯はその上に重ねる別の映像です。話の内容に合う手元の映像を、説明の途中に差し込むことを示しています。

よくある失敗と、その直し方

ひとつめは、きれいな風景ばかりを集めることです。作品としては見栄えがしても、話の理解には結びつきません。話に出た言葉から選びます。

ふたつめは、素材を全部使おうとすることです。撮った枚数が多いほど、詰め込みたくなります。使わない素材があって当然です。

「仕事の前に机と道具を整えます」という一文に、机全体、道具を置く手、準備完了の画を組み合わせてみてください。声だけの状態と比べて、説明が分かりやすくなったかを確かめます。

AロールとBロールの違い

2つの違いは、映像の種類ではなく役割です。同じ手元の映像でも、料理の手順そのものを見せる動画ならAロールになり、話の補足として重ねるならBロールになります。インタビューを例に並べると、次のようになります。

インタビュー動画でのAロールとBロールの比較
項目AロールBロール
役割話の筋を運ぶ主となる映像話の内容を目で補う映像
インタビューでの例話している人の顔や上半身話に出てくる手元、道具、作業の場所
音話す声を使う声はAロールのまま。手元の音などを小さく残すこともある
なくした場合話が成り立たない話は伝わるが、具体的な様子が見えにくくなる

Aロールだけでも話は成り立ちます。Bロールは、話を聞いた人が頭の中で思い浮かべる様子を、実際の映像で見せる役割を持ちます。

3つの場面で、Bロールを書き出す記入例

以下は架空の場面です。話している内容(Aロール)から、重ねるBロールと音の扱いを書き出しています。撮る前にこの形でメモしておくと、撮り忘れが減ります。

架空の3場面で考えるBロールの記入例
場面Aロールで話す内容重ねるBロール音の扱い
パン店の店主インタビュー「朝いちばんに生地の状態を確かめます」生地を指で押す手元、並んだ生地の箱店主の声を残す。手元の音は小さく
自転車修理の解説「走る前にブレーキの効きを見ます」レバーを握る手、止まる車輪の寄り解説の声を残す。レバーの音は聞こえる程度に
学生の作品紹介「撮る前に絵コンテを描きました」ノートに四角を描く手元、描き終えたページ本人の声だけを使う

どの場面も、Bロールは話に出てきた言葉から選んでいます。書き出したカットは、撮影リストの役割の欄に「何を補うか」として書いておくと、現場で撮り漏れに気づけます。引き・中・寄りのどれで撮るかは撮る距離の使い分けを参考にしてください。

Bロールの撮影メモを、現場で使う

上の表と同じ4項目を記入できる空欄シートです。まず「Aロールで話す内容」を書き、その言葉を補う映像と音の扱いを決めます。1行に1つの話題を書いてください。

撮影メモを保存する(CSV) ↓

登録不要・無料。ExcelやGoogleスプレッドシートで編集できます。空欄は3行用意していますが、必要に応じて行を増やせます。

決まったカットを撮影順に整理するときは、撮影リストの記入例とテンプレートへ進んでください。

音声を残して重ねる、基本の編集手順

編集ソフトが違っても、基本の流れは同じです。声を途切れさせず、映像だけを差し替えるように重ねます。

  • Aロールを並べ、話の順番と長さを先に決める
  • Bロールを、Aロールより上の映像トラックに置く。声はAロールのまま残す
  • Bロールの音は、いったん下げるか切る。手元の音が説明を助けるなら、声の邪魔にならない大きさで残す
  • 重ねる範囲は、話にその物が出てくるあたりから、その話題が終わるところまでを目安にする
  • 通して再生し、表情を見せたい場面を隠していないか、声と映像の内容がずれていないかを確かめる

Aロールの長さを先に決めるのは、あとから話を詰めると、重ねたBロールの位置がずれやすいためです。並びと長さが決まってから重ねると、手戻りが少なくなります。

仕上げに、声だけを聞いて意味が通るかも確かめます。Bロールは声を補うものなので、声だけで分からない箇所は、映像を足す前に話の切り方を見直します。

今日の1アクション約15分

説明に出てくるものを、3カット撮り足す

話に出てくる道具や場所を撮っておくと、編集での選択肢が増えます。

  1. 説明の中で名前が出てくるものを3つ書き出す。
  2. それぞれを、手元が分かる距離で5秒ずつ撮る。
  3. 説明の音声の上に重ね、内容と合っているか確認する。

内容と関係ない映像を重ねると、話が頭に入らなくなります。出てくるものを優先します。