
相手が短く答えて会話が止まる。次の質問を探しているうちに、空気が重くなる。撮影する側も焦ります。
答えが短いのは、相手が話したくないからとは限りません。質問が抽象的で、何を思い出せばよいか分からないことが多くあります。
ここでは、相手が答えやすい質問のつくり方を扱います。答えを誘導するのではなく、思い出せる手がかりを渡す方法です。
聞く前に、相手のことを調べる
質問は、その場で思いつくものより、準備したもののほうが深く入れます。相手について調べる時間を、前日までに取ります。
用意するのは次のとおりです。
- 相手の情報:公開されている経歴や活動、これまでの発言
- 質問の紙:手に持てる大きさで、順番に並べる
- 収録時間:何分もらえるか。質問の数を決める材料になる
- 使い道の説明:どこで公開するかを、収録の前に伝える
調べたことをそのまま質問にすると、確認だけで終わります。「なぜそうしたのか」「そのとき何を考えていたか」に置き換えると、その人の言葉が出てきます。
最後に伝えたいことを決める
仕事紹介なら「一日の流れを知ってもらう」など、見た人に持ち帰ってほしい情報をひとつ決めます。質問は、その情報を集めるために用意します。
目的が決まっていないと、質問が散らばります。良い話が録れても、作品に使えないことになります。
「やりがいは?」だけでなく、「昨日の仕事で、手応えを感じたのはどんな場面でしたか」と聞きます。時期と場面を限定すると、出来事から話しやすくなります。
一度に聞くのは、ひとつ
「きっかけと苦労と将来の目標を教えてください」とまとめると、何から答えるか迷わせます。最初はきっかけ、次に具体的な経験、と順に聞きます。
返答の中に気になる言葉があれば、「そのとき、具体的に何をしましたか」と掘り下げます。準備した質問を全部読むことより、話の中身を追います。
用意した質問は、順番どおりに使わなくて構いません。会話の流れに合う質問を選べるよう、手元に並べておくだけで十分です。
質問の数は、時間の目安から決めます。10分の収録なら5問前後。多く用意すると、消化することが目的になります。
最初から核心を聞くと、答えが短くなりがちです。
図の内容4つの手順を順につないだ図です。答えやすい事実から入り、具体的な出来事を聞き、そのときの判断を聞き、最後に相手が伝えたいことを聞く流れを示しています。
沈黙を、すぐ埋めない
相手が考えている間に次の質問を重ねると、思い出しかけた話が途切れます。少し待ち、言葉が続くかを見ます。
沈黙は編集で切れます。焦って質問を重ねた声は、切りにくい形で残ります。待つほうが、結果として使える素材が増えます。
撮影前には、言い直せることと、答えにくい質問は飛ばせることを伝えておきます。望む答えが出るまで同じ質問を繰り返すのではなく、本人の言葉を尊重します。
広げる質問か、絞る質問か
返ってきた答えによって、次に出す質問を変えます。
- 答えが抽象的:「どんな場面でしたか」と、場面を絞る
- 答えが短い:「そのとき何をしましたか」と、行動を聞く
- 答えが長く逸れた:「さきほどの○○について」と、戻す
- 答えが十分:次の話題へ進む。深追いしない
判断の基準は、その答えが作品の目的に使えるかどうかです。面白い話でも、目的から外れていれば、使いどころがありません。
相手が話し慣れていない場合は、答えやすい質問から始めます。いきなり核心を聞くと、緊張が解けないまま終わります。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、欲しい答えを先に口に出してしまうことです。「大変でしたよね」と聞けば、相手は「はい」と答えます。本人の言葉ではなくなります。
ふたつめは、質問を読み上げることに集中して、答えを聞いていないことです。掘り下げる機会を逃します。
「始めたきっかけ」「最近の具体的な出来事」「これから試したいこと」の3問で、協力してくれる人に短く聞いてみてください。公開する場合は別途確認します。聞き返して抽象的だった箇所に、「どんな場面?」「何をした?」のどちらを補えばよかったかを考えます。
今日の1アクション約15分
質問を7つ書いて、順番を並べ替える
当日に考えると、聞きたいことから聞いてしまいます。先に並べておきます。
- 聞きたいことを7つ書き出す。
- 事実・出来事・判断・まとめの4段階に振り分ける。
- その順に並べ替え、最初の1問を答えやすいものに差し替える。
相手の答えが続いているうちは、次の質問に進まず待ちます。沈黙のあとに本題が出ることがあります。