
撮影リスト(ショットリスト)は、撮影の前に必要なカットを1行ずつ書き出し、場面・役割・サイズ・音・優先度・撮影済み・再生確認を整理しておく一覧です。この記事の後半に6カットの記入例と、そのまま使える無料のCSVテンプレートを置いています。
現場ではたくさん撮ったのに、編集を始めると説明に必要な場面がない。撮り直しに行ける状況ならまだしも、行けないことのほうが多くあります。
撮影リストは、撮る量を増やすための道具ではありません。必要な場面を取りこぼさないための道具です。
ここでは、現場で実際に使えるリストの書き方を扱います。項目を増やしすぎると見なくなるので、最小限から始めます。
書く前に、当日の流れを確かめる
カット表は、当日の流れに沿っていないと使えません。書き始める前に、撮影日の時間と場所を確認します。
確かめるのは次の項目です。
- 使える時間:入れる時刻と、出る時刻
- 場所の移動:何か所を回るか、移動にかかる時間
- 人の都合:出演者や協力者が居られる時間帯
- 光の条件:屋外なら、その時間の明るさ
この4つが分かると、書けるカットの数が見えてきます。時間内に収まらないと分かった時点で、削るか、日を分けるかを決められます。
「何を伝えるカットか」を書く
道具の紹介なら、「道具」「手元」だけで終えません。「大きさが分かる全体」「使い方が分かる手元」「仕上がりが分かる完成形」と、役割まで書きます。
各カットに役割があれば、似たアップばかりを撮る事態を避けられます。撮影中は目の前のものに集中するので、全体の配分を見失いがちです。
映像を見た人に何を理解してほしいか。そこから逆算すると、必要なカットが決まります。撮りたいものではなく、必要なものから書きます。
役割が思いつかないカットは、後回しにできることが多いものです。書けないまま残すより、いったん外して、余裕があれば撮る側へ回します。
必須と、余裕があれば撮るものを分ける
説明に欠かせない場面に丸をつけ、それ以外は追加カットにします。時間が押したとき、雰囲気のある映像より先に必須カットを確保できます。
一例として、「全体・操作・結果」が必須、「光の反射・周囲の風景」が追加。作品の目的によって優先順位は変わるので、撮影前に決めます。
現場で判断しようとすると、その場の面白さに引っ張られます。事前に印をつけておけば、迷う時間が減ります。
必須かどうかは、そのカットがないと説明が伝わらないかで決めます。数の割合で決める必要はありません。ただ、印をつけ終えたら一度見直し、雰囲気のためだけのカットに丸がついていないかを確かめます。
撮影順と確認欄を足す
一覧に「場所」「必要な道具」「音の有無」「撮影済み」「再生確認」を足します。撮れたつもりでも、ピントや音に問題があることがあります。
撮影済みと確認済みは、別のチェックにします。録画ボタンを押したことと、使える素材が撮れたことは違います。
移動や片づけの前に、必須カットだけでも再生してください。その場なら撮り直せます。帰ってから気づくと、光や人の都合などの条件をそろえ直すのは難しくなります。
確認は、音も一緒に聞きます。映像だけを見て通過し、編集時に音の問題に気づくことがよくあります。
思いつくままに撮ると、あとで足りない場面が出てきます。
図の内容撮影リストの5項目のチェックリストです。場面、距離、動き、必要な音、撮る順番を、1カットごとに書いておきます。
どこまで細かく書くか
書きすぎると現場で読まなくなり、書かなすぎると役に立ちません。目安は次のとおりです。
- 一人で撮る:6行程度。場面・役割・距離・音の4項目
- 協力者がいる:必要な道具と担当を追加する
- 依頼された仕事:撮影順と確認欄まで含め、共有できる形にする
紙かスマートフォンかは、現場の環境で選びます。屋外で手がふさがるなら、紙のほうが確実なこともあります。
リストは撮影中に書き足して構いません。むしろ、思いついたカットを書き足すために余白を残しておきます。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、リストを作っただけで現場では見ないことです。ポケットに入れたまま撮影が終わります。移動のたびに一度開く、と決めておくと見る習慣がつきます。
ふたつめは、完成映像の順でリストを書き、そのまま撮ろうとすることです。同じ場所のカットが分散して、準備を何度も繰り返します。
撮り終わったら、リストの順ではなく完成映像の順に素材を並べてください。つながらない箇所があれば、追加すべき場面を具体的に書いて次回へ残します。
撮影リストの記入例と無料テンプレート
下の表は、コーヒーのいれ方を紹介する架空の短い動画を想定した記入例です。6カットを、撮影前に1行ずつ書いています。
| 番号 | 場面 | 役割(何を伝えるか) | サイズ | 音 | 優先度 | 撮影済み | 再生確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 道具を並べた机の全体 | 使う道具と、それぞれの大きさを見せる | 引き | 環境音だけ録る | 必須 | □ | □ |
| 2 | 話す人の上半身 | 誰が説明しているかを見せる | 中 | 声を録る | 必須 | □ | □ |
| 3 | お湯を注ぐ手元 | 使い方の中心になる動作を見せる | 寄り | 注ぐ音を録る | 必須 | □ | □ |
| 4 | はかりの表示 | 豆とお湯の量を数字で伝える | 寄り | なし(声を重ねる) | 必須 | □ | □ |
| 5 | できあがったカップ | 仕上がりを見せて締める | 中 | なし(声を重ねる) | 必須 | □ | □ |
| 6 | 窓辺に立つ湯気 | 雰囲気を足す。なくても説明は伝わる | 寄り | なし | 余裕があれば | □ | □ |
優先度は、そのカットがないと説明が伝わらないかで決めています。6の湯気は見栄えがしますが、なくても手順は伝わるので「余裕があれば」にしました。サイズの選び方は引き・中・寄りの使い分けで詳しく扱っています。
撮影済みと再生確認の欄は、現場で□に印をつけて使います。2つを分けておくと、録ったつもりの素材と、使えると確かめた素材を区別できます。
どちらもExcel、Numbers、Googleスプレッドシートなどの表計算ソフトで開けます。空欄版は、番号だけを振った10行です。記入例版は上の表と同じ内容なので、行を書き換えて使うこともできます。印刷して紙で持ち歩く使い方もできます。
絵コンテを描いている場合は、その順番を撮影順に並べ直すとリストの下書きになります。描き方は撮影に使える絵コンテの書き方へ。インタビューの話を補う映像を撮るなら、Bロールの撮り方を読んでから役割の欄を埋めると、撮り足すカットが具体的になります。
今日の1アクション約12分
次の撮影のリストを、5カットだけ書く
完璧な計画は要りません。5カット書ければ、現場の判断はかなり軽くなります。
- 撮る予定の作業を思い浮かべる。
- 必要な場面を5つ書き出し、それぞれに距離を書き添える。
- 撮りやすい順に番号を振り直す。
現場で増えたカットは、リストに書き足します。次回の見積もりの材料になります。