
初めて依頼の相談を受けると、機材や編集方法の話へ進みたくなります。何ができるかを伝えたい気持ちは自然なものです。
けれど、先に決めるべきなのは、どんな役割の映像が必要なのかです。ここがずれたまま進むと、技術的にうまくできていても「思っていたのと違う」と言われます。
ここでは、最初の打ち合わせで確認しておきたい項目と、曖昧な言葉を具体的にする聞き方を扱います。
打ち合わせの前に、聞くことを書き出す
打ち合わせでは、話の流れに合わせているうちに聞き忘れが出ます。前もって聞く項目を並べておくと、その場で埋めていけます。
最低限、次の枠を用意します。
- 目的:この映像で何が起きてほしいか
- 見る人:どこで、どんな状態で見るか
- 使う場所と期間:掲載先と、いつまで使うか
- 決める人:内容に最終的な判断をする人
- 締め切り:公開日と、その前の確認日
記録の取り方も先に決めます。録音するなら、始める前にひと言断ります。あとで文章にまとめて相手に送る前提にしておくと、聞き漏らしにその日のうちに気づけます。
何を見て、どうしてほしいかを聞く
「紹介動画が欲しい」という相談なら、誰に何を知ってもらいたいのかを聞きます。商品を初めて見る人への説明と、すでに買った人への使い方の案内では、構成がまったく変わります。
「おしゃれに」「かっこよく」のような言葉は、参考にしている例を見せてもらい、そのどこが好みなのかまで聞きます。色、テンポ、文字量に分けて確認すると、同じ言葉の受け取り方の差が見えてきます。
この段階では、否定も提案もしなくて構いません。まず相手の言葉を集め、そのうえで整理します。
届け先と本数を、具体的にする
Webサイト、SNS、会場での上映など、掲載先を確認します。掲載先が決まると、縦横比、長さ、音が出る前提かどうかが自動的に決まっていきます。
「短くした別版も」と言われたら、それは別の成果物です。作業が発生することを、この時点で共有しておきます。
すでに素材がある場合は、実物を確認できる時期と、足りない素材を誰が用意するかも決めます。素材待ちは、日程が崩れるいちばんの原因です。
ロゴや商品写真は、使ってよい形式かどうかも確認します。画面に載せられる解像度がなければ、差し替えを頼むことになります。
好みの話に入る前に、条件の枠を固めます。
図の内容打ち合わせで確認する6項目のチェックリストです。目的、視聴者、掲載先、尺、締切、素材と許可の状況を、最初に聞いておきます。
決める人と、確認の時期をそろえる
窓口の担当者と、最終的に判断する人が違う場合があります。この構造を知らないまま進めると、完成間際になって新しい意見が増えます。
構成、初稿、最終版を、それぞれ誰がいつ確認するのかを整理します。日付が決まっていなくても、順番と担当だけは決めておきます。
話した内容は、短い文章にまとめて相手に送ります。打ち合わせに出ていない人にも、目的と範囲が伝わる状態を目指します。
聞く順番と、答えが出ないときの扱い
全部を一度に聞くと、相手も答えに詰まります。決まりやすい順に聞くと進みます。
- 目的:この映像で何が起きてほしいか
- 視聴者:誰が、どんな場面で見るか
- 掲載先:どこに載るか。縦か横か、音は出るか
- 尺:長さの指定と、入れたい内容の量
- 締切:公開日と、確認をもらえる日
- 素材と許可:提供される素材、出演者や場所の許可
答えが出ない項目は、推測で埋めないでください。「未確定」と書いて共有し、いつまでに決まるかだけ確認します。埋まったことにして進めると、あとで構成ごと作り直すことになります。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、その場で「できます」と答えてしまうことです。範囲が決まっていない段階での約束は、あとから自分の首を絞めます。持ち帰って整理してから返事をします。
ふたつめは、相手の言葉をそのまま議事録にしてしまうことです。「おしゃれに」とだけ書いても、あとで読み返して何も判断できません。
記録には、聞いた言葉と、それを自分がどう理解したかを並べて書きます。理解が間違っていれば、相手が読んだ時点で指摘してもらえます。
今日の1アクション約15分
確認項目のメモを1枚つくる
毎回思い出すのをやめて、同じ紙を見ながら聞ける状態にします。
- 目的・視聴者・掲載先・尺・締切・素材の6項目を書き出す。
- 各項目に「聞いた答え」を書く空欄をつくる。
- 次の相談のとき、この1枚を開いたまま話を聞く。
答えが出ない項目は空欄のままにし、「未確定」と共有します。埋まったふりが後で効いてきます。