
動画編集の見積もりでは、金額と、その金額でどこまで対応するかをセットで伝えます。「一本の編集」だけでは、素材の量や字幕の範囲、別サイズの書き出しが含まれるか分かりません。ここでは、見積書の制作範囲欄に書く項目を、記入例で整理します。
数える前に、何を渡すかを確かめる
見積もりの前に、完成して渡すものが何本で、どんな形かをはっきりさせます。ここが曖昧なままだと、作業量の見込みが大きく外れます。
書き出す前に、次を確認します。
- 本数と尺:長い版と短い版があるか
- 素材の出どころ:撮影から行うか、渡された素材を編集するか
- 用意されるもの:ロゴ、資料、出演者、場所などを誰が手配するか
- 確認の回数:何回まで直しに応じるか
この4つは、話し合いの段階で文章にして残します。あとから作業が増えたときに、「これは最初の範囲に入っていたか」を照らし合わせる材料になります。
工程ごとに、必要な作業を書き出す
企画、撮影準備、撮影、素材整理、編集、確認対応、書き出し。まずはこの粒度で、発生する作業を並べます。
見落としやすいのは、撮影当日と編集時間以外の作業です。打ち合わせ、移動、データのコピーと確認、修正待ちの再開作業。これらも実際には時間を使っています。
「編集一式」と書く場合も、内訳を説明できるようにしておきます。字幕をつけるのか、音の調整をどこまでやるのか、支給素材の加工が含まれるのか。相手が判断できることが大切です。
納品物を、数と仕様で書く
「横型の紹介映像1本、約60秒、確認用の初稿1回」のように、数と条件をそろえて書きます。これは記入の練習例であり、実際の条件は案件ごとに決めます。
縦型版、短縮版、字幕なし版、編集プロジェクトの引き渡し。必要なら、含むかどうかを個別に書きます。書かれていないものは含まれない、という前提を共有します。
頼まれていない成果物を、好意で増やさないでください。次回から前提になり、範囲の話が毎回振り出しに戻ります。
渡す形式も書きます。ファイル形式、解像度、受け渡しの方法。あとで「別の形式で」と言われたときに、追加作業だと説明できます。
変更が起きたときの進め方を決める
構成が決まったあとの作り直し、追加の撮影、支給素材の遅れ。これらが起きたときに、作業を始める前に影響を共有する流れを決めておきます。
追加の費用や日程を、黙って変えないことが大切です。伝えずに引き受けると、次も同じ条件で頼まれます。伝えたうえで引き受けるなら、それは判断です。
税の扱い、支払い条件、契約の形式は、実際の取引条件に合わせた確認が必要です。ここでは金額の相場や法的な有効性は扱わず、制作範囲の整理に絞っています。
含めるか、別にするか
迷いやすい項目は、あらかじめ分類しておくと判断が速くなります。目安は次のとおりです。
- 含める:打ち合わせ、撮影日、編集、書き出し、回数を決めた修正
- 別にする:追加の撮影日、素材の作り直し、決定後の構成変更
- 相談する:締切の前倒し、想定より多い素材量、当日の内容変更
「別にする」と決めた項目は、断るためのものではありません。発生したときに、あらためて時間と条件を話すための区分です。
事前に伝えておけば、相手も予算と日程を組み直せます。伝えずに我慢するより、結果的に関係が続きやすくなります。
同じ「編集1本」でも、含む範囲で作業量は大きく変わります。
図の内容2列の比較表です。左は見積もりに含める範囲で、撮影日数、編集、指定回数までの修正など。右は別扱いにして事前に伝える項目で、追加撮影、素材の作り直し、大幅な構成変更、急ぎの対応です。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、修正の回数を書かないことです。回数が決まっていないと、終わりのない作業になります。「2回まで」のように書き、それ以降の扱いも添えます。
ふたつめは、自分の作業時間を把握しないまま金額を決めることです。安く受けすぎても、高く見積もりすぎても、根拠を説明できません。
直近の1本を、作業の一覧に分解してみてください。実際にかかった時間が分かると、次の見積もりで判断する材料になります。
制作範囲欄の記入例
以下は架空の編集依頼の例です。見積書の制作範囲欄に使い、金額や支払いなど他の必要項目と合わせて整理してください。角括弧は依頼ごとに埋めます。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 支給素材 | 合計[ ]分/形式[ ]/受領予定[ ] |
| 納品物 | 完成尺60秒程度・横型16:9・MP4・1本(この例の設定) |
| 基本編集 | 支給素材のカット・並べ替え、音量調整 |
| 字幕 | [全文/指定箇所]。原稿の作成・確認は[担当者] |
| 音楽・画像 | 素材を用意する担当[ ]/利用条件の確認担当[ ] |
| 修正 | 初稿後[ ]回。各回の指示は[確認担当者]がまとめる |
| 含む修正 | [例:合意した構成内のカット調整・指定字幕の修正] |
| 追加相談 | 構成の変更、後から届く素材の追加、別サイズ・別言語版の作成など |
| 日程 | 素材受領[ ]/初稿[ ]/確認戻し[ ]/最終納品[ ] |
修正回数だけでなく、どの変更を含むかも合わせて書きます。素材や構成、納品本数が変わった場合は、追加作業に入る前に費用と日程を確認しましょう。自分の作業ミスへの対応と、依頼内容の追加・変更は分けて整理しておくと、説明しやすくなります。
動画字幕の見積もり:先にそろえる条件
「字幕を入れる」という依頼だけでは、作業範囲を決められません。完成動画の長さに加えて、どの言葉を残すか、原稿を誰が用意するか、どの形で納品するかを確認します。次の項目を依頼者とそろえてから、必要な作業を見積もります。
- 対象:完成動画の本数・長さ、字幕をつける区間。未編集素材からの文字起こしも必要か。
- 内容:発言を残す全文字幕か、要点を整理するテロップか。言い直しや口ぐせをどう扱うか。
- 原稿:支給の有無、固有名詞や専門用語の資料、聞き取れない箇所を確認する担当。
- 表記と見た目:指定書体・色・配置、話者の区別、参考動画のどの部分を合わせるか。
- 言語:日本語のみか、翻訳を含むか。翻訳文を作る担当と確認する担当。
- 納品:動画へ入れた字幕が必要か、字幕データも必要か。字幕なし版や縦型版の要否。
- 確認:原稿と見た目を確認する時点、修正の範囲、初稿・確認戻し・納品の希望日。
全文字幕と要点テロップの違いは、読みやすい字幕をつくる手順で整理できます。両方が必要なら、それぞれの対象と役割を分けて書きます。字幕データの形式は、使うサービスや受け渡し先の指定を確認して決めてください。
字幕の見積もりを頼むときの文面
以下は条件を整理するための文面です。角括弧を実際の内容に置き換え、未定の項目は「相談したい」と記載してください。送信前に、素材や参考動画を相手へ共有できるかも確認します。
動画の字幕制作について、見積もりをお願いします。
対象動画:[本数・完成尺・字幕をつけたい区間]
希望する字幕:[全文字幕/要点テロップ/相談したい]
原稿・用語資料:[支給できるもの/文字起こしから依頼したい範囲]
表記・見た目の希望:[参考動画と、合わせたい部分]
言語・翻訳:[対象言語・翻訳文の担当]
納品物:[字幕入り動画/字幕データ/字幕なし版など]
日程:素材共有[ ]、初稿希望[ ]、確認戻し[ ]、納品希望[ ]
確認担当:[ ]
上記条件での対応範囲と、含まれる修正内容・回数をお知らせください。未定の部分は相談のうえ確定したいと考えています。
見積もりを受け取ったら、金額だけでなく、文字起こし・表記の確認・翻訳・別形式の納品がどこまで含まれるかを照合します。後から原稿や完成尺が変わった場合は、作業を進める前に変更内容を共有し、日程と対応範囲を確認します。
今日の1アクション約20分
直近の1本を、作業の一覧に分解する
金額を考える前に、実際にかかった作業を並べます。次の見積もりの根拠になります。
- 最近つくった1本を選び、やった作業を順に書き出す。
- 各作業にかかったおよその時間を書き添える。
- 見落としやすい作業(データ整理、確認待ち、書き出し直し)を探す。
相手に出す金額の話ではなく、自分の作業量を把握するための練習です。