最初の一本の扉写真。コーヒーをいれる手元をスマートフォンで撮影する机
完成を先に見せてから、準備の手元へ戻る。順番が決まると撮るものが決まる。

初めての一本は、身近な動作を短く伝える動画から始めましょう。ここではコーヒーを用意して片づける場面を例に、6カットを45秒にまとめる練習を紹介します。45秒は編集後の長さです。用意する道具や手順は、無理なく撮れるものに置き換えてください。企画・撮影・編集・書き出しの順に、ワークシートへメモしながら進められます。

用意するものは3つだけです。手元のスマートフォン。それを固定できる安定した台(三脚でも、本を重ねた上でも構いません)。そして、音を確かめるイヤホン。特別な機材は使いません。撮り始める前に、横長か縦長かだけ決めておきます。どちらでも構いませんが、途中で変えると並べたときにそろいません。

完成の条件も、先に決めておきます。「45秒前後で、最初に何の映像か分かり、作業の順番を追えて、別の端末で再生しても字幕が読めて音が聞こえる」。ここまで届いたら、その一本は完成です。うまいかどうかは、次の一本で考えます。

まずは、ひとりに伝わる映像をつくろう。

最初から壮大な作品を目指さなくて大丈夫です。今回は、使い慣れた道具をひとつ選び、その使い方を伝える30〜60秒の映像をつくります。

たとえば、コーヒードリッパー。「家でコーヒーをいれてみたい人」に、「道具を出してから片づけるまでの流れ」を伝えます。誰に何を伝えるかが決まると、撮るものを選びやすくなります。

この記事では、最後までコーヒーの準備と片づけを例に進めます。おいしいいれ方を正確に説明する映像ではありません。主役と手元を見せて、作業の流れが追える映像を目指します。

コーヒーでなくても構いません。手帳の使い方でも、机の整理でも。選ぶときの条件は、自分で手順を説明できること、そして同じ動作を何度でもやり直せることです。

一度きりしか起きない出来事は、最初の練習には向きません。撮り直せない題材だと、失敗した時点で作品が止まります。題材選びで迷ったら、何を撮るかの決め方もあわせてどうぞ。

撮る前に、6つの場面を書き出す。

カメラを回す前に、撮る場面を順番に書き出します。きれいな企画書は要りません。紙の端に「順番・撮るもの・長さ」を並べれば十分です。手書きで進めたい場合は、無料ワークシートを保存する(PDF・4ページ・記入例つき)に同じ表が入っています。

下の表は、コーヒーの準備と片づけを45秒にまとめた構成例です。秒数はすべて、編集したあとの映像の長さを指します。お湯を注ぐのに10秒しかかけない、という意味ではありません。その場面を10秒に編集する、という意味です。実際の手順は、途中を短く編集した例として見せます。

45秒・6カットの構成例(練習用)。秒数は編集したあとの長さです。
撮るもの画の大きさ編集後の位置長さねらい
1できあがったカップ寄り0〜4秒4秒何の映像かを示す
2道具を並べる引き4〜10秒6秒場所と準備を見せる
3道具を準備する手元寄り10〜17秒7秒動作を伝える
4お湯を注ぐ手元中〜寄り17〜27秒10秒作業音を生かす
5片づける中27〜37秒10秒最後までの流れを示す
6整った机とカップ引き37〜45秒8秒終わりを作る
合計6カット/45秒

完成した状態を先に見せると、そのあとの手順が何のための作業か分かります。最後にもう一度、整った机を引きで見せると、終わったことが伝わります。

「引き」「中」「寄り」は、被写体をどのくらいの大きさで写すかの目安です。寄りばかりを並べると、どこで何をしているのか分からなくなります。使い分けは画の大きさの選び方にまとめました。

書き出した表は、そのまま撮り忘れを防ぐ撮影リストになります。撮る順番は表のとおりでなくて構いません。同じ場所で撮るものをまとめて撮ると、片づけが一度で済みます。リストの作り方は撮影リストのつくり方へ。

いれ方まで説明する場合は、器具の使い方を説明書で確かめておきましょう。自分の普段のやり方が、その道具の正しい使い方とは限りません。

まず短く撮って、その場で見る。

手元のスマートフォンから始められます。いきなり全部を撮らず、表の1行目だけを10秒撮って再生してください。

確かめるのは3つです。手元は明るく見えるか。作業音や声は聞こえるか。画面は揺れすぎていないか。ここを最初に通すと、後でまとめて撮り直す事態を避けやすくなります。

撮る前に、スマートフォンを台に固定します。固定を先に済ませてから、撮影を始めてください。熱いお湯を扱う場面では、スマートフォンを手に持たないこと。注ぐ場面は固定したまま撮り、両手を作業に使えるようにします。

光は、窓を味方にすると早く整います。手元が暗いときは、照明を買う前に立ち位置を変えてみてください。窓の光の扱いは窓の光だけで撮るにまとめています。

音は、イヤホンをつないで確かめます。換気扇や外の音が作業音より大きいときは、止められる音を止める、場所や時間帯を変えるなどして、短く録り直します。録り方の基本は聞き取りやすい音で録るへ。

再生は、その場で行います。撮影を終えて片づけてから気づくと、同じ光と同じ配置を再現できません。数十秒の確認が、数時間を節約します。

スマホを置くなら、倒れない場所に。水や熱から離し、背景に住所や書類などが写り込んでいないかも確認しましょう。人の顔や持ち物が入る場合は、撮る前に断っておきます。

編集は、並べてから整える。

編集は、進める順番が決まっています。この順で通すと、やり直しが減ります。

  • 素材を複製する:元のファイルは触らず、コピーで作業する
  • 選別する:大きく揺れた、音が割れたなど、使えないものを先に外す
  • 仮に並べる:表の順番どおりに置く。長さはまだ調整しない
  • 間を詰める:待ち時間と、同じ動きの繰り返しを削る
  • 音を整える:作業音が聞こえるか。音楽を入れるならここで
  • 必要な字幕を足す:映像だけでは伝わらない説明にだけ使う
  • 書き出す:見せる相手の画面に合わせた設定で出す
  • 別の端末で見る:編集画面ではない場所で、通して再生する

仮に並べた段階では、字幕も音楽も入れません。並べただけの状態で意味が通るかを見ます。装飾を先に足すと、流れの問題が見えにくくなります。

「ここで何をしたか分からない」と感じたら、順番を変えるか、その場面を少し長くします。必要な映像が足りなければ、撮り足しても大丈夫です。最初から全部そろえる必要はありません。

45秒は、今回の構成例の長さです。守らなければいけない決まりではありません。40秒でも55秒でも、順番を追えて最後まで見られるなら、その長さが正解です。

手を動かす順番の考え方は、編集を進める順番で詳しく扱っています。

フィールドノート45秒を4つのまとまりに分ける

本文の6カットは、役割で4つにまとまります。どこを厚くするか迷ったときは、このまとまりで考えます。

図の内容冒頭・準備・手順・最後の4コマを順につないだ図です。カット1の4秒で完成した状態を見せ、カット2〜3の13秒で準備、カット4の10秒で手順、カット5〜6の18秒で片づけと終わりを置き、合計45秒になります。

迷いやすいのは、この3つ。

最初の一本で迷いやすい3つの例です。撮影済みの引きがあれば並べ直し、なければそのカットを撮り足します。字幕と音楽は、編集で調整します。

  1. 手元だけを並べてしまう

    直す前ずっと寄りの映像で、どこで何をしているか分からない。

    直したあと机全体の引きを1カット足して、場所を先に見せる。

  2. 字幕を入れすぎる

    直す前話した言葉をすべて出して、読み終わる前に画面が変わる。

    直したあと一画面に一つの要点だけ残し、読み終える時間をつくる。

  3. 音楽で作業音が消える

    直す前BGMを足したら、お湯を注ぐ音が聞こえなくなった。

    直したあと音量を下げ、入れた場合と入れない場合を聞き比べて決める。

字幕の分量で迷ったら、読みきれる字幕の入れ方を目安にしてください。一画面に一つの要点、読み終わる時間を残す。この2つだけでも、ずいぶん見やすくなります。

音楽は、入れたほうがよいとは限りません。入れた版と入れない版を続けて再生して、作業音が残っているほうを選びます。迷ったら、音楽なしのままでも構いません。

完成したら、編集画面の外で確かめる。

書き出した動画を、いつも見るスマートフォンなどで再生します。編集画面では気づかなかった、小さな字幕や音の違いが見つかることがあります。

  • 最初の4秒で、何の映像か分かる。
  • 引きと寄りが混ざっていて、場所と手元の両方が分かる。
  • 作業の順番を追える。
  • 字幕を読み終える時間がある。
  • 作業音が聞こえる。音楽が作業音や声を消していない。
  • 黒い画面や、不要な場面が残っていない。
  • 音を消しても、何をしている映像かが伝わる。

書き出しの設定で迷ったときは、書き出す前の確認を先に見てください。

知人に見てもらうときは、聞き方を変えるだけで返ってくる答えが変わります。感想ではなく、見えたことを聞きます。

  • 「どうだった?」ではなく、「何をする映像に見えた?」
  • 「かっこよかった?」ではなく、「途中で分からなくなったところはある?」
  • 「字幕どう?」ではなく、「読み終わる前に切り替わったところはあった?」

答えが自分の意図とずれていたら、直すのは相手ではなく映像のほうです。多くの場合、冒頭の4秒か、引きの1カットが足りていません。

公開するときは、出演者、場所、画像、音楽などの使用条件と必要な許可も確認します。練習で使えることと、公開できることは分けて考えましょう。

作品には、自分がやったことを添える。

映像だけを載せるより、目的と担当を書き添えると、見る人があなたの仕事を理解しやすくなります。

  • 自主制作:コーヒーの準備と片づけを紹介する短編映像(45秒)
  • 目的:初めて使う人に、作業の流れを伝える
  • 担当:企画・撮影・編集
  • 工夫:完成した状態を冒頭に置き、引きと寄りを組み合わせて順番を追いやすくした

これは練習用の記入例です。実際に担当した内容に直してください。自主制作は自主制作と書き、依頼された仕事と混同させないようにします。

添える文章の長さや並べ方は、作品に添える説明の書き方にまとめています。空欄から書き始めるなら、無料の作品説明テンプレートを使ってみてください。

一本つくっただけで仕事が決まるとは限りません。それでも、「次は音をよくしたい」「手元の映像が足りなかった」と、次の練習がはっきりしてきます。

止まったときに、どこへ戻るか。

途中で進まなくなったら、前の工程に戻ります。多くの場合、原因は今いる場所にはありません。

  • 編集で行き詰まる:必要な場面が撮れていない。撮影へ戻る
  • 撮るものが決まらない:誰に何を伝えるかが未定。企画へ戻る
  • 完成したが伝わらない:冒頭で何の映像か示せていない
  • 手をつけられない:題材が大きすぎる。30秒に縮める

構成表を作っていれば、戻る場所はもっと早く見つかります。6行のうちどの行で止まったかを見て、その行だけ撮り直してください。全部をやり直す必要はありません。

いちばん多いのは最後です。「暮らしを紹介する」ではなく「朝、机を整える30秒」まで縮めると、撮るものが決まります。

完璧な一本を目指さないでください。目的は、最後まで通すことです。粗さは、次の一本で減らせます。

今日の1アクション約15分

題材をひとつ決めて、冒頭の1カットだけ撮る

全部を撮ろうとせず、冒頭に置く場面だけを撮って再生してみます。ここが決まると、残りの場面も選びやすくなります。

  1. 使い方を説明できる道具を、身の回りからひとつ選ぶ。
  2. 「誰に」「何を伝えるか」を、ひと言ずつメモする。
  3. 構成表の1行目(完成した状態が分かる場面)を10秒だけ撮り、その場で再生する。

うまく撮れなくても消さずに残します。次に何を直したいかが、比べる材料になります。

次に試すこと

思いついたことを、書いてみよう。

作品の目的と、撮りたい場面を整理できる無料シートです。記入例を見ながら、あなたの企画に置き換えてみてください。

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PDF/A4・4ページ/記入例つき。印刷して手書きで使えます。

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