
音楽を入れると、映像の雰囲気は確かに変わります。それまで素っ気なかった映像が、急に作品らしく見えてきます。
けれど、話している内容が聞こえなくなったら逆効果です。とくに手順を説明する映像では、声が届かない時点で目的を果たせません。
音は、役割の大切な順に整えると判断しやすくなります。まず声、次に効果音、最後に音楽。この順番を守るだけで、迷いはかなり減ります。
音を触る前に、聞く環境をそろえる
音の調整は、聞いている環境に引きずられます。小さな音量で作業すると、あとで別の機器で見たときに、音楽だけが大きく聞こえることがあります。
始める前に確かめることは3つです。
- 再生する機器:ヘッドホンだけで判断せず、スピーカーやスマートフォンでも聞く
- 作業中の音量:途中で変えない。変えると、前に調整した場面と比べられなくなる
- 使う音源の条件:その用途で使ってよい素材か
音源の条件は、ダウンロードする前に読みます。無料でも、用途や表記の決まりがあることがあります。あとで差し替えるより、選ぶ段階で確認するほうが早く終わります。
まず、声だけで通して聞く
BGMと効果音をいったん無音にして、頭から最後まで聞きます。話す人が変わるところや、カットの切り替わりで、音量が急に変わっていないかを確認します。
目指すのは、視聴者が端末の音量を何度も触らずに済む状態です。小さい声に合わせて上げた直後に大きな音が来る、という並びを見つけて直します。
すべての波形を同じ高さにそろえるのが目的ではありません。強調や自然な抑揚は残したまま、内容を無理なく聞き取れるかどうかで判断します。
聞きながら、直す場所の時間をメモします。通しで聞く作業と、直す作業を分けたほうが、全体の流れを見失いません。
BGMは、控えめな状態から足す
小さい音量から少しずつ上げ、声の聞き取りやすさがどう変わるかを比べます。最初から適量を狙うより、変化の途中を聞いたほうが判断しやすくなります。
曲によって邪魔になり方は変わります。歌詞のある曲、音数の多い曲は、同じ音量設定でも声とぶつかりやすくなります。
曲の盛り上がる部分で、急に声が埋もれていないかも確認します。ひとつの数値を全部の作品に当てはめず、作品ごとに聞いて決めます。
使う曲の利用条件も、作業に入る前に確認します。公開する場所や商用利用の可否は、曲ごとに違います。
音楽を全編に均一で敷くと、説明の場面が聞き取りにくくなります。
図の内容2本の帯の図です。声は説明の場面で途切れずに続き、音楽は声のない冒頭と終わりで前に出て、説明の間は音量を下げて背景に回ることを示しています。
効果音と、音のない時間も調整する
操作音やクリック音が、声より大きく飛び出していないかを聞きます。カットの境目で音が不自然に切れていないかも確認し、必要なら前後をなだらかにつなぎます。
すべての間を音楽で埋める必要はありません。道具の音を聞かせたい場面や、説明を受け止めるための間では、音楽を減らしたほうが伝わることがあります。
無音が続くと不安になりがちですが、視聴者にとっては理解する時間になります。意図して置いた無音と、消し忘れた無音は別物です。
音楽を下げるか、場面を変えるか
声が聞き取りにくいとき、直し方は一つではありません。原因によって選び分けます。
- 音楽が全編で同じ音量:説明の区間だけ下げる
- 曲の特定の部分だけぶつかる:その部分を避けて曲を配置し直す
- 歌詞が言葉と重なる:歌詞のない曲に差し替える
- 声そのものが遠い:音量ではなく、収録し直しを検討する
最後の場合だけは、編集で解決しきれません。音量を上げると背景の雑音も一緒に大きくなるためです。撮り直せるなら、そちらのほうが早く済みます。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、ヘッドホンだけで判断することです。ヘッドホンでは聞こえる小さな声が、スマートフォンのスピーカーでは消えることがあります。両方で確認します。
ふたつめは、全体の音量を上げて解決しようとすることです。声と音楽の関係が変わらないまま、全体が大きくなるだけで終わります。
直すときは、聞こえない場所と、それを邪魔している音を先に特定します。音楽をその区間だけ下げれば直ることが、実際にはかなり多くあります。
今日の1アクション約10分
音楽だけ消して、説明が聞き取れるか確かめる
音量のつまみを動かす前に、何が邪魔をしているかを切り分けます。
- 音楽トラックを無音にして、説明の場面を再生する。
- 音楽を戻し、同じ場面をもう一度聞く。
- 聞き取りにくくなる場面を書き出し、その区間だけ音楽を下げる。
スピーカーとイヤホンでは聞こえ方が変わります。可能なら両方で確認してください。