仕事の準備の扉写真。撮影前に現場と機材を確認する制作者
断ることではなく、条件を先に言葉にすること。

初めての依頼に返事をするときは、完成させる条件を具体的に確認しましょう。同じ「動画一本」でも、素材の状態、必要な編集、確認の回数によって作業は変わります。納品物・素材・期限・修正範囲を聞き、自分の環境と予定で進められるか確かめてから返答します。

返事をする前に、確かめること

最初の仕事は、内容よりも条件で苦しくなることがあります。引き受けると答える前に、確認する時間をもらいます。「一度持ち帰ります」と伝えるのは、失礼にはあたりません。

確かめるのは、自分が動ける範囲かどうかです。

  • 期間:着手できる日と、締め切りまでに使える日数
  • 作業内容:撮影、編集、字幕、音のどこまでを含むか
  • 立ち会い:現場に行く必要があるか、何時間か
  • 素材の受け渡し:容量が大きい場合、渡す手段があるか

いま抱えている予定も、同じ紙に並べます。ほかの締め切りと重なっていないかを見てから返事をすると、あとから無理に詰め込まずに済みます。

完成の条件と、期限を聞く

何を、何本、いつまでに、どの状態で渡すのか。この4つを確認します。どれかが空欄のままだと、あとで前提が食い違います。

「来週使いたい」と言われたら、使用日だけでなく、確認と修正に使える日も必要です。作業が終わる日と、相手が使える日は同じではありません。

素材がすぐ届く前提で日程を組まないでください。受け取れる日時を確認します。撮影や出演者の調整がある場合は、自分以外の予定も進行に関わります。

やったことのない部分は、小さく試す

使ったことのない素材形式、初めての編集方法、触ったことのない機材。これらは、短いサンプルで先に確認します。

本番の全量を受け取ってから「開けない」と分かる事態を避けるためです。数分の試行で防げることが、あとでは何日分の遅れになります。

できないことを、できると言わないでください。「この条件はテストしてから回答します」と区切れば、相手も待てます。協力者が必要なら、実際に依頼できるか確認してから約束します。

初めての依頼ほど、断られたくない気持ちが先に立ちます。けれど、確認のための1日は、相手にとっても損ではありません。

やり直しに使う時間も確保する

作業時間ぴったりで予定を組むと、修正やデータの再送だけで遅れます。確認待ちの時間も含めて、余裕のある日程をつくります。

余裕は、能力の不足を補うものではありません。連絡が来ない、素材が差し替わるといった、自分では動かせない要因のためのものです。

間に合わないと分かったら、期限を変える、本数を絞るなど、実行できる条件を提案します。相手の使用目的を満たせないなら、その理由も具体的に伝えます。

フィールドノート受ける前に決めておくこと

条件を先に置くと、断るか受けるかの判断が速くなります。

図の内容2列の比較表です。左は受ける前に決めておく条件で、対応できる範囲と時間、修正の回数、連絡の方法と時間帯。右は無理が出やすい状況で、範囲が決まらないまま始まる、当日連絡で撮影が増えるなどの例です。

受けるか、条件を変えるか

判断に迷ったら、次の順に確認すると整理できます。ひとつでも空欄が残るなら、返事の前に聞きます。

  • 完成の条件が決まっているか
  • 期限までに、確認と修正の時間が残るか
  • 未経験の部分を、事前に試せるか
  • 素材がいつ届くか決まっているか
  • 自分以外の協力者が必要なら、依頼できるか

空欄が多いときは、断るのではなく条件を変えて提案します。「撮影は別日に分ける」「初稿の確認を1回にする」など、実行できる形を示すほうが話が進みます。

よくある失敗と、その直し方

ひとつめは、範囲が決まらないまま着手してしまうことです。進めながら決めるつもりが、いつの間にか相手の希望がすべて範囲に入ります。着手の前に、決まっていることと未定を書き分けます。

ふたつめは、連絡できる時間帯を伝えないことです。深夜や休日の即答が前提になると、その形が次から標準になります。

対応できる範囲、返信できる時間帯、修正の回数。この3つを3行で書いておき、相談が来たらそれを見ながら返事をします。その場で考えないための備えです。

返事の前に埋める確認表

初案件を受ける前の確認事項
確認項目聞くこと
使い道誰が、どこで見る動画か。参考動画のどの要素を希望しているか
納品物動画の本数・尺・縦横比・形式・別バージョンの有無
素材合計尺、ファイル形式、受け取り予定日、不足素材の担当
編集範囲カット、字幕、音、図版、演出のどこまでを含むか
日程初稿日・相手の確認日・最終納品日
確認と修正誰が意見をまとめるか。含む修正と、追加相談になる変更
費用と支払い予算、見積もりへの合意、支払時期など未確認事項

条件が明確で素材を扱え、必要な時間を確保できるなら、受注を検討します。情報が足りなければ質問してから判断します。期限や範囲に無理があれば変更案を出し、合わなければ見送ります。

まだ受注を確約しない返信例

ご相談ありがとうございます。対応範囲と日程を確認するため、完成動画の長さ・本数、素材の合計尺、素材をいただける日、初稿と最終納品の希望日を教えていただけますでしょうか。参考動画がある場合は、特に希望される部分もお知らせください。内容を確認し、[回答予定日時]までに、対応可否と見積もりをご連絡します。

既に分かっている質問は削除し、回答予定日時は実際に返事できる日時へ置き換えてください。

確認した条件を、見積もりの作業範囲にまとめる

今日の1アクション約10分

自分の条件を3行に書いておく

相談が来てから考えると、その場の勢いで返事をしてしまいます。先に文章にしておきます。

  1. 対応できる作業の範囲を1行で書く。
  2. 返信できる時間帯を1行で書く。
  3. 修正の回数と、それを超えた場合の扱いを1行で書く。

相手を疑うための文章ではありません。お互いが同じ前提で進めるためのメモです。