
納品するとすぐ次の作業へ進みたくなります。終わったことを振り返る時間は、生産的に見えないからです。
けれど、困ったことの記憶は数日で薄れます。そして次の現場で、同じ場所でまた止まります。
ここでは、短い時間で終わる振り返りの手順を扱います。反省会にはしません。次の1本で変えることを、ひとつ決めるために使います。
振り返る前に、記録を集める
振り返りは、記憶だけで書くと感想になります。手元の記録を先に集めると、次に変えることが具体的になります。
集めるのは、その案件で実際に残ったものです。
- 最初の見積もりや作業予定
- やり取りの記録:依頼の内容と、途中で変わった部分
- かかった日数:工程ごとに分かる範囲で
- 修正の内容と回数
時間を測っていなかった場合も、思い出せる範囲で構いません。次の案件では、工程ごとに終わった日だけでもメモしておくと、比べられる材料になります。
予定と実際を、工程ごとに比べる
撮影準備、撮影、素材整理、編集、修正対応。工程ごとに分けて、どこで予想より時間がかかったかを書きます。
正確な記録がなければ、概算だと明記したうえで書きます。次回から計測すれば、比べられる数字が増えていきます。
「自分が遅い」で済ませないでください。「支給された画像のサイズが足りず、作り直した」のように、出来事まで具体的に書きます。改善できる場所を見つけるための記録です。
時間が延びた原因は、作業そのものより待ち時間にあることが多くあります。素材の到着、確認の返事、権利の確認。自分の手が止まっていた時間も書き出します。
うまくいった手順も残す
問題だけを書くと、次に読み返したときに気が重くなります。続けたい方法も同じだけ書きます。
撮影リストを先に共有したら現場の迷いが減った、版番号をそろえたら確認が早くなった。こうした小さな工夫は、意識しないと忘れます。
次回も再現できるよう、使った資料やチェック項目の置き場所も書き添えます。感想ではなく、もう一度使える手順にすることが大切です。
うまくいった理由が分からないこともあります。その場合は、やったことだけを事実として書いておき、次回も同じ手順を試して確かめます。
反省会にせず、次に変える1点を決めるために行います。
図の内容4つの手順を順につないだ図です。事実を時系列で並べ、うまくいった点を先に挙げ、詰まった点の原因を探し、次に変える1点だけを決める流れです。
変えることは、ひとつに絞る
改善案を十個並べても、次の現場で全部は覚えていられません。影響が大きく、すぐ実行できる変更をひとつだけ選びます。
たとえば「収録を始める前に、30秒だけ試し録りして再生する」。いつ、誰が、何をするかまで書ければ、単なる注意喚起より実行しやすくなります。
選ばなかった案は消さずに残します。ひとつが定着したら、次の候補から選べます。
選ぶときは、効果の大きさより実行のしやすさを優先します。準備に時間のかかる改善は、忙しい現場では後回しになり、結局身につきません。
すぐ書くか、あとでまとめるか
振り返りの精度は、書くタイミングでほぼ決まります。目安は次のとおりです。
- 納品直後:記憶が鮮明。出来事と感情の両方が書ける
- 数日後:事実は残るが、判断の理由を思い出しにくい
- 数週間後:結果しか残らない。改善点を特定しにくい
理想は納品直後ですが、疲れている日は無理をしなくて構いません。その場合は、出来事を3行だけメモし、後日に整理します。
完璧な振り返りを目指すより、短くても毎回書くほうが積み上がります。時間は15分で区切ります。
よくある失敗と、その直し方
ひとつめは、反省だけで終わることです。「次は気をつける」は行動ではないので、次の現場で何も変わりません。手順の形にして書きます。
ふたつめは、顧客の非公開情報を、そのまま公開できる場所に書いてしまうことです。振り返りは自分用の記録として、扱いを分けて保管します。
次の1本が終わったら、決めた変更が役に立ったかを確認します。効果がなければ方法を変えます。振り返りは自分を責めるためではなく、次の作業を具体的に変えるために使います。
今日の1アクション約15分
直近の1本を、15分で振り返る
時間を区切ると、記憶が新しいうちに終えられます。長く書く必要はありません。
- 出来事を時系列で5行だけ書く。
- うまくいった判断を2つ挙げる。
- 次の1本で変えることを1つだけ決め、日付とともに書く。
決めた1点は、次の作品の準備メモにそのまま貼り付けておくと忘れません。