はじめの一歩の扉写真。コマ割りを描いた絵コンテと鉛筆
絵が下手でも困らない。枠と矢印で、順番は伝わる。

絵コンテは、映像の順序と、各カットの画面・動き・音・目安の尺を、撮影の前に共有するための設計メモです。上手な絵は要りません。四角の中の簡単な図と、文字の書き込みで役目を果たします。

絵コンテと聞くと、上手な絵を描かなければいけないように感じます。その印象のせいで、最初から手をつけない人も多くいます。

けれど絵コンテは、絵のうまさを見せる資料ではありません。現場で「次に何を撮るか」を迷わず決めるためのメモです。棒人間と四角でも機能します。

ここでは、撮影で実際に使える最小限の書き方を扱います。後半には、3カットの記入例と、撮影リストとの違いも載せています。

描く前に、話の終わりを決める

絵コンテは、絵のうまさではなく順番を決めるための道具です。描き始める前に、最後にどうなっていれば伝わったことになるかを決めます。

用意するものは、紙とペンで足ります。

  • 四角を並べた紙:手描きでよい。1枚に6コマ程度
  • 伝えたいこと:ひと言で書けるまで短くする
  • 尺の目安:30秒か1分か。コマ数の見当がつく

絵が描けないと感じる場合は、棒人間と矢印で構いません。人の位置、カメラの向き、動く方向が分かれば、撮影の現場では十分に役に立ちます。

四角の中に、主役の位置を書く

紙に四角を3〜6個描きます。人物なら丸と棒、道具なら簡単な形を入れます。画面のどこに主役がいるかが分かれば十分です。

四角の比率は、撮影する画面に合わせます。横長で撮るのに正方形で描くと、実際の画面との差が大きくなります。

四角の下には「机全体」「右手のアップ」のように距離を書きます。被写体の名前だけでは、広く撮るのか寄って撮るのかが伝わりません。

練習で自分だけが使うなら、1枚に長い時間をかけなくても構いません。描き込むより、画面と距離が伝わるかを優先します。迷ったら、四角と距離の文字だけで先に最後まで並べます。

動きと音は、文字で補う

カメラが動くなら矢印と「右へゆっくり」、被写体が動くなら「手がカップを置く」と書きます。どちらが動くのかを区別しておくと、現場での混乱が減ります。

声や道具の音が必要な場面も書き添えます。カップを置く音が見せ場なら、その音を静かな環境で収録する準備が必要になります。

絵で表現しようとせず、文字で書いてください。絵コンテは読むための資料であって、見せるための作品ではありません。

話し声が入る場面なら、その台詞も短く添えます。映像と言葉のどちらが先に来るかが決まると、撮る長さの目安もつかめます。

物語の順番と、撮る順番を分ける

完成映像の順番で絵を並べ、その横に撮影順の番号を振ります。同じ机、同じ明かりで撮れるカットをまとめると、準備を繰り返す手間が減ります。

ただし、飲み物が減る、紙に文字が増えるなど、元に戻しにくい動作には注意します。前後の状態を合わせる必要があるなら、撮る順番を優先して組み直します。

撮影順が決まると、必要な道具と時間も見えてきます。この段階で足りないものに気づければ、当日の慌てが減ります。

協力者がいる場合は、撮影順の一覧だけを共有しても役立ちます。全部の絵を見せなくても、次に何を撮るかが伝われば現場は動きます。

撮影順に並べ直した一覧に、音や確認欄を足すと撮影リストになります。撮影リストの記入例と無料テンプレートも使えます。

フィールドノート絵コンテの書き方

絵の上手さではなく、何が映っているかが分かれば足ります。

図の内容4つの手順を順につないだ図です。枠を描き、映るものを描き、距離と動きを書き足し、必要な音や声をメモする流れを示しています。

何枚描くか、どこまで描くか

全場面を描く必要はありません。目的によって、必要な枚数は変わります。

  • 自分だけで撮る:3枚(冒頭・中盤・最後)で流れが確認できる
  • 協力者がいる:場面ごとに1枚。何を撮るかを共有する
  • 依頼された仕事:構成の合意に使う。相手が判断できる粒度まで

迷ったら少なく始めます。描きながら足りないと感じたら、そのとき足せば十分です。

撮影中に変えても構いません。変えた理由を書き足しておくと、次の準備で同じ判断ができます。

よくある失敗と、その直し方

ひとつめは、きれいに描こうとして時間を使いすぎることです。絵の仕上げで手が止まるなら、途中でも試し撮りをしてみると、足りない情報に早く気づけることがあります。

ふたつめは、描いたあとに読み返さないことです。現場で見なければ、書いた意味がありません。

描き終えたら、絵コンテを見ながら必要な道具とカメラの位置を声に出して説明してみてください。言えない場面は、情報が足りていない可能性があります。

机を片づける3カットの記入例

下の表は、散らかった机を片づける様子を撮る、架空の短い練習動画の絵コンテを文字にしたものです。四角の中に描く図の代わりに、画面の欄へ「何が画面に入るか」を書いています。

架空の練習動画「机を片づける」の絵コンテ記入例
カット画面動作音目安秒数
1引き。散らかった机の全体と、座った人人が机の前に座り、机の上を見回す部屋の環境音3秒
2中。両手と机の上の本・ペン本を立てて並べ、ペンをペン立てに戻す本やペンを置く音5秒
3引き。1と同じ位置から、片づいた机と人ノートを開いて書き始める部屋の環境音3秒

1と3を同じ位置から撮ると、片づける前と後の違いが比べやすくなります。2だけ中くらいの範囲にして、何をしたのかを見せています。

目安秒数は、この練習例のために置いた仮の数字です。撮影の準備に使う目安で、この長さなら伝わるという保証ではありません。実際の長さは、撮った素材を並べてから決めます。

絵コンテと撮影リストの違い

絵コンテと撮影リストは、どちらも撮影前に書くメモですが、役目が違います。

絵コンテと撮影リストの違い
項目絵コンテ撮影リスト
並び順完成映像の順撮る順
主に書くこと画面・動き・音・目安の尺場面・役割・サイズ・優先度・撮影済み・再生確認
使う場面構成を決め、関わる人と共有する現場で撮り漏れを防ぎ、撮れたかを確かめる

上の3カットなら、1と3は同じ位置なので続けて撮れます。撮る順に並べ直し、撮影済みと再生確認の欄を足せば、撮影リストになります。撮影リストの記入例と空欄のCSVテンプレートを使うと、そのまま書き込めます。

3カットの空欄メモを、無料で使う

記事の記入例を自分の題材に置き換えるためのテキストです。画面・動き・音・尺・撮影順を順に埋め、必要なら同じカット番号のラフ図を紙や別の資料に添えてください。

登録なしで保存できます。3カットは練習の出発点で、必要に応じて増減できます。

空欄メモを保存する(無料・TXT)

UTF-8テキスト。メモアプリなどで編集できます。

空欄メモの全文を開く・コピーする
絵コンテの記入メモ(3カット・空欄)
映像クリエイターの学校 / WEBTRIBE

題材:[何を撮るか]
見る人:[誰に見てもらうか]
伝えること:[一文で]
画面の向き:[横長 / 縦長]

完成映像の順に書きます。必要なカットは増減してください。
画面のラフが必要なら、同じ番号の図を紙や別の資料に添えます。

【カット1】
画面・サイズ:[何がどこに入るか / 引き・中・寄り]
被写体の動作:[人や道具がどう動くか]
カメラの動き:[固定 / 動かす方向]
音・台詞:[声 / 作業音 / 環境音]
目安の尺:[仮の長さ。編集で調整]
撮影順・準備:[撮る順番 / 必要な道具]

【カット2】
画面・サイズ:[ ]
被写体の動作:[ ]
カメラの動き:[ ]
音・台詞:[ ]
目安の尺:[ ]
撮影順・準備:[ ]

【カット3】
画面・サイズ:[ ]
被写体の動作:[ ]
カメラの動き:[ ]
音・台詞:[ ]
目安の尺:[ ]
撮影順・準備:[ ]

撮る前の確認
・完成映像の順で、伝えたいことがつながるか
・各カットの画面・動き・必要な音が分かるか
・撮影順を変えても、机や道具などの前後の状態がつながるか
・撮影後に見返す項目を、撮影リストへ引き継いだか

使い方・記入例:https://videotribe.jp/articles/storyboard/
撮影リスト:https://videotribe.jp/articles/shot-list/#step-7

今日の1アクション約15分

3枚だけ描いて、撮る順番を決める

全場面を描く必要はありません。冒頭・中盤・最後の3枚で流れが見えます。

  1. 紙に同じ大きさの四角を3つ描く。
  2. 冒頭・中盤・最後に映るものを、それぞれ描き込む。
  3. 各枠の下に、引きか寄りかと、必要な音を書く。

撮影中に変えて構いません。変えた理由を書き足すと、次の準備に使えます。