編集の扉写真。別々の保存媒体に撮影データを複製する机
コピーの数ではなく、別の場所から開けるかどうかで判断する。

動画素材のバックアップは、作業用とは別の媒体にコピーし、元と照合したうえで、そのコピーから実際に開けるか(復元できるか)を確かめるところまでを1セットにします。コピーしただけでは、途中で欠けていても気づけません。

撮影したデータは、同じ瞬間を撮り直せないことがあります。それでもバックアップは後回しになりがちです。容量も時間も使うのに、何も起きなければ効果が見えないからです。

ここでは最小限の手順に加えて、記事の後半で3-2-1ルールの考え方と、コピー後に使える確認表を扱います。

コピーを始める前に、置き場所を2か所決める

バックアップは、撮影が終わったその日に始めるのがいちばん簡単です。時間が経つほど、どのカードをどこまで写したかが分からなくなります。

始める前に、次の3つを決めておきます。

  • 作業用の保存先:これから編集で読み書きする場所
  • 予備の保存先:作業用とは別の媒体。外付け、別のパソコン、クラウドなど
  • カードを消してよいタイミング:必要なコピーと照合、別の媒体からの再生確認が終わったあと

予備の媒体は、撮影に出る前に空き容量を見ておきます。現場から戻ってから足りないと気づくと、その日のうちにコピーが終わりません。

仕事の素材では、置いてよい場所が条件で決まっていることがあります。クラウドを使う前に、依頼した相手に保存先を確認しておくと、あとで移し替えずに済みます。

同じドライブの別フォルダは、予備にならない

一台のドライブの中で複製しても、そのドライブ自体が故障すれば、両方を同時に失います。複製の数ではなく、物理的に別の媒体にあるかどうかが分かれ目です。

作業用とは別の保存媒体に、もうひとつコピーを持ちます。外付けドライブ、別のパソコン、クラウドなど、手段は環境に合わせて選びます。

クラウドを使う場合は、その案件の素材を置いてよい契約か、容量が足りるか、共有設定が意図どおりかを先に確認します。仕事の素材では、置き場所そのものが条件になることがあります。

コピーしたあとに、中身を確認する

コピーが終わった直後に、ファイルの数と合計容量を比べます。数が合わないときは、隠しファイルや管理ファイルが落ちている可能性があります。

そのうえで、代表的な映像と音声をいくつか再生します。可能なら、コピーソフトの照合機能やチェックサムによる比較も使います。

数と容量の一致や、代表の数本が再生できたことは、全ファイルの中身が一致している保証にはなりません。自分のコピー方法で、どこまで確認できたのかを把握しておきます。

素材と編集データの両方を残す

完成した動画だけを残しても、あとから字幕を直したり、構成を変えたりはできません。素材、編集プロジェクト、使用した画像や音源など、作業を再開するために必要なものをまとめて残します。

編集ソフトの自動保存がどこに書かれているか、その保存先に空き容量があるかも確認しておきます。容量が尽きると、自動保存が静かに止まっていることがあります。

フィールドノート予備になる保存と、ならない保存

同じ量をコピーしていても、守れるものは変わります。

図の内容2列の比較表です。左は予備になる保存で、別の媒体にコピーし、内容を照合し、素材と編集データの両方を残します。右は予備になりにくい保存で、同じドライブ内の複製や、完成動画だけを残す方法です。

どこまでやるかは、撮り直せるかで決める

手間のかけ方は「もう一度撮れるかどうか」で調整します。ただし、別媒体へのコピーをなくす判断はしません。

  • 撮り直せない(式典、インタビュー、一度きりの作業):別媒体に2か所。照合と復元の確認まで行う
  • 撮り直せるが手間がかかる(協力者が必要な撮影):別媒体に1か所以上。照合と再生確認まで行う
  • いつでも撮り直せる(自室での練習):別媒体に1か所。件数と容量を比べ、再生して確かめる

カードを初期化するのは、必要な数のコピーと照合、復元の確認が終わってからです。予備のカードを用意しておくと、現場で容量が足りず急いで消す状況を避けられます。

よくある失敗と、その直し方

ひとつめは、コピー中に接続が切れて、途中までのファイルが残る失敗です。見た目はファイルが存在するので、気づきにくいのが厄介なところです。件数と容量の比較に照合機能を組み合わせると見つけやすくなります。代表を数本再生するだけでは見落とすことがあります。

ふたつめは、予備のドライブを作業にも使ってしまうことです。予備のつもりが、いつの間にか2台目の作業用になり、どちらが正しい版か分からなくなります。

予備の媒体には、書き込む日を決めておきます。撮影した日と、編集を終えた日の2回だけ触る、と決めるだけでも混ざりにくくなります。

3-2-1ルールで、コピーの持ち方を決める

3-2-1ルールは、データを一度に失わないためのバックアップの考え方です。

  • 3:原本を含めて3つ持つ(作業用の原本と、バックアップ2つ)
  • 2:少なくとも2種類の保存媒体に分ける(内蔵ディスクと外付けドライブなど)
  • 1:1つは別の拠点に置く(自宅とは別の場所、クラウドなど)

同じ部屋に3台並べても、火災や盗難、水濡れでまとめて失うおそれがあります。別拠点の1つは、こうした事故への備えです。

クラウドの同期だけに頼るのは避けます。同期は、手元での削除や上書き、壊れたファイルもそのまま反映することがあります。接続を外して保管するオフラインのコピーや、過去の版に戻せる履歴を別に持つと、戻れる地点が残ります。履歴から戻せる期間も確かめておきます。

どの形でも、実際にそのコピーから戻せるかをときどき試します。試していないバックアップは、いざというときに当てにできません。

コピー後の確認表

上から順に確かめると、確認できる範囲が広がります。

動画素材をコピーしたあとの確認表
確認項目見ること分かること
コピー完了エラーが出ずに終わったか。途中で接続が切れていないか処理が最後まで進んだこと。中身の正しさまでは分からない
件数・容量元とコピー先で、ファイル数と合計容量が同じかファイルの欠けに気づきやすい。中身の一致までは分からない
チェックサム照合機能やハッシュ値で、元とコピーを比べたかファイルごとに中身が一致しているか
別媒体から再生作業用ではなく、コピー先から映像と音声を開けるかそのコピーが使えること。数本だけでは全件の保証にならない
プロジェクト復元コピー先の素材と編集データで、プロジェクトを開いて素材がつながるか作業を再開できること

編集前のフォルダ整理で決めた構成のままコピーしておくと、復元したときに素材の場所を探し直さずに済みます。

参考:CISA「Data Backup Options」(英語・PDF)

今日の1アクション約15分

予備のコピーから、短い編集を開いてみる

「コピーした」ではなく「そこから開けた」まで確認します。カードを消去する前の手順になります。

  1. 練習用プロジェクトを、作業用とは別の媒体にコピーする。
  2. コピー先のファイルだけを編集ソフトで開く。
  3. 映像と音声が再生できるか、リンク切れが出ないかを確認する。

元のファイルを消して試す必要はありません。開けることが確認できれば十分です。